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COLUMN

会社設立時の資本金はいくらにすべきか?決め方の判断軸

2026.11.01

資本金

「資本金はいくらにすればいいですか」というご相談は、会社設立の手続きの中でも特によく聞かれる質問の一つです。

会社法上、株式会社の資本金は1円でも設立できます。かつての有限会社法にあった「最低資本金300万円」「株式会社1,000万円」といった規制は、2006年の会社法施行によりすでに撤廃されています。

ただし、制度上できることと、実務上おすすめできることは別の話です。資本金は税金・信用力・当面の資金繰りのそれぞれに影響するため、闇雲に決めると設立後に困る場面が出てきます。このコラムでは、資本金額を決めるために押さえておきたい判断材料を、順番に整理します。

判断材料①
消費税:資本金1,000万円未満なら得られる免税期間

新しく設立した法人には、一定の条件を満たせば消費税の納税義務が免除される期間があります。その条件の一つが、資本金の額です。

設立時の資本金が1,000万円未満であれば、原則として設立から2事業年度、消費税の納税義務が免除されます。個人事業主として長く消費税を納めてきた方であっても、法人化にあたって資本金を1,000万円未満に抑えれば、この免税期間をあらためて使えることになります。

ここで注意したいのが、「必ず2年間免税」ではないという点です。設立1期目の上半期6か月間(特定期間)における課税売上高と、給与等の支払額の両方が1,000万円を超えると、2期目からは課税事業者になります。特に設立初年度から売上が大きく立つ見込みがある場合は、この特定期間の判定も合わせて確認しておく必要があります。

もう一つ、実務上ぶつかりやすいのがインボイス制度との関係です。取引先が仕入税額控除のためにインボイスを必要としている場合、免税事業者のままでは取引条件の見直しを求められる可能性があります。インボイス発行事業者として登録すれば、その時点で課税事業者となり、資本金要件による2年間の免税メリットは使えなくなります。免税を取るか、インボイス登録を取るかは、資本金の額だけでなく取引先の構成によって決まる部分です。この判断軸については、法人化のタイミングに関するコラムでも取り上げていますので、あわせてご参照ください。

結論として、消費税だけを見れば「資本金は1,000万円未満に抑える」ことが有利になります。

判断材料②
法人住民税の均等割:資本金1,000万円が区分の境目

法人住民税には、利益の有無にかかわらず一定額がかかる「均等割」という仕組みがあります。この均等割の税額は、資本金等の額と従業員数によって区分が決まります。

自治体ごとに金額は異なりますが、多くの自治体では資本金等の額が1,000万円以下、かつ従業員数50人以下の区分が最も低いランクに設定されています。目安として、都道府県民税と市町村民税を合わせて年間7〜8万円程度が最低ラインです。

資本金が1,000万円を超えると、この均等割の区分が一段階上がり、年間の負担額が18〜20万円に増えます。設立当初は赤字が続くことも珍しくありませんが、均等割は赤字であっても必ず発生する固定費ですので注意が必要です。

判断材料③
登録免許税:資本金額に比例する設立コスト

資本金の額は、設立時に一度きり発生する登録免許税にも直接影響します。

資本金額別に登録免許税を試算すると、次のようになります。

資本金 株式会社の
登録免許税
合同会社の
登録免許税
100万円 15万円(最低額) 6万円(最低額)
300万円 15万円(最低額) 6万円(最低額)
500万円 15万円(最低額) 6万円(最低額)
1,000万円 15万円(最低額) 7万円
2,143万円 15万円
(最低額を超える境目)
15万円
3,000万円 21万円 21万円

株式会社の場合、資本金がおよそ2,143万円を超えるまでは、資本金額にかかわらず登録免許税は最低額の15万円で変わりません。逆に言えば、資本金を100万円にしても1,000万円にしても、株式会社の登録免許税は同じ15万円ということです。この点だけを見れば、登録免許税は資本金額を決める決定的な要因にはなりにくいと言えます。

ただし合同会社の場合は最低額が6万円と低いため、資本金を大きくするとその分だけ登録免許税も比例して増えていきます。合同会社を選ぶ場合は、この点も含めて資本金額を検討する余地があります。会社形態そのものをまだ決めていない場合は、株式会社と合同会社、初めての起業ならどちらを選ぶべきかもあわせてご確認ください。

判断材料④
対外的な信用力・融資・許認可要件

資本金は登記簿に記載され、取引先や金融機関が閲覧できる情報です。この点で、資本金が対外的な印象に影響することがあります。

一般に、資本金が極端に低いと、取引先の与信審査や金融機関の融資審査で慎重に見られる場合があります。特にBtoBで法人相手に取引する場合、契約前に登記簿謄本の提出を求められ、資本金の額が判断材料の一つになることは珍しくありません。

一方で、資本金が高ければ高いほど有利というものでもありません。実際の融資審査では、資本金そのものよりも、事業計画の実現性や代表者の経歴、既存の取引実績のほうが重視される傾向にあります。資本金を無理に積み増すよりも、事業計画をきちんと説明できる状態にしておくことのほうが、実務上は効果的な場合が多いといえます。

業種によっては、資本金や自己資本額そのものが許認可の要件になっているケースもあります。たとえば建設業許可では自己資本額500万円以上、労働者派遣事業では基準資産額2,000万円以上といった基準が定められています。IT関連の受託開発やコンサルティングなど、許認可を必要としない業種であれば、この点はあまり気にしなくてよい部分です。該当しそうな業種で開業を予定している場合は、事前に必要な基準額を確認しておく必要があります。

判断材料⑤
当面の運転資金としての資本金

資本金は登記のための数字ではなく、実際に会社の口座に入り、事業に使えるお金です。この実務的な側面も、資本金額を決めるうえで欠かせない視点です。

売上が安定するまでの間、家賃・外注費・仕入れ・広告費、場合によっては代表者自身の生活費まで、資本金でまかなうケースは少なくありません。目安として、当面の運転資金として3〜6か月分程度を見込んで資本金を設定するという考え方が一般的です。

この視点で見ると、資本金をむやみに低く設定することにもリスクがあります。資本金1円や10万円といった極端に少ない金額でスタートすると、設立直後の経費支払いだけで資本が底をつき、代表者からの個人資金の持ち込み(役員借入金)に頼らざるを得なくなる場合があります。役員借入金自体は珍しい処理ではありませんが、決算書の見た目としては望ましいものではなく、金融機関の評価にも影響します。

資本金が少なすぎることで起きる問題

ここまでの内容とも重なりますが、資本金を低く抑えすぎた場合に起きやすい問題を、あらためて整理しておきます。

債務超過になりやすい
設立初年度が赤字になった場合、資本金が少ないほど早い段階で純資産がマイナス(債務超過)に陥ります。債務超過は金融機関の評価を大きく下げる要因であり、追加の融資が受けにくくなります。

取引先の登記簿確認で不利に見える
資本金1円や1万円といった金額は、登記簿を確認した取引先に「事業の実態が薄いのでは」という印象を与える場合があります。特に新規の取引開始時にはマイナス材料になりやすい部分です。

あとから増資すると、かえって手間とコストがかかる
資本金が少なすぎたと後から気づき、増資する場合には、登記費用や司法書士報酬が別途かかります。最初から一定の余裕を持たせておくほうが、結果的に無駄が少なくなるケースもあります。

結局、資本金はいくらにすべきか

ここまで見てきた判断材料を整理すると、次のようになります。

  • 消費税:1,000万円未満に抑えれば、設立2期の免税メリットを受けられる可能性がある
  • 均等割:1,000万円以下であれば、法人住民税の均等割が最も低い区分に収まる
  • 登録免許税:株式会社は最低15万円で収まることが多い
  • 信用力:低すぎても高すぎても最適ではなく、事業計画のほうが重視される
  • 運転資金:当面3〜6か月分の資金として、実際に使える金額であることが前提

これらを重ね合わせると、「1,000万円未満」であることに加えて、「当面の運転資金をまかなえる金額」という条件の交点が、資本金額を決めるうえでの現実的な着地点になります。一般的な目安としては、100万円〜300万円程度で設定されるケースが多く見られますが、これは業種や事業計画によって大きく変わる部分でもあります。

資本金の額は、設立後に減らすことは可能ですが、手続きには時間とコストがかかります。増資も同様です。だからこそ、設立前の段階で、税金・信用力・当面の資金繰りを総合的に見た金額を決めておくことが望ましいといえます。

資本金額の設定でお悩みの場合は、ご相談いただければ、消費税の判定や均等割の負担も含めて具体的に整理できます。当事務所では無料相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

本記事は執筆時の税制に基づいています。

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