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COLUMN

会社を設立すると、住所はどこまで公開されるのか

2026.11.01

住所

※本記事は制度の一般的な解説であり、個別の登記手続き等に関するご相談は法律により税理士ではお受けできません。誠にお手数ですが司法書士にご相談ください。

自宅を本店として会社を設立される方は多く、その場合に何がどこまで公開されるのかは、設立前に把握しておきたい点です。2024年10月には代表取締役の住所を一部非表示にできる制度も始まりましたが、対象となる会社の形態が限られているなど、誤解されやすい部分があります。

このコラムでは、会社設立によって公開される情報の範囲と、それを踏まえた本店所在地の決め方を整理します。

公開されるのは「本店」と「代表者の住所」

登記事項証明書は誰でも取得できる

会社の登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本)は、その会社と何の関係もない第三者であっても、手数料を払えば取得できます。法務局の窓口で請求することもできますし、オンラインの登記情報提供サービスを使えば、その場で画面上に表示させることも可能です。

つまり、登記された情報は「請求すれば誰でも見られる情報」だと考えておく必要があります。

実際の記載形式は、法務省が公開している記載例で確認できます。

参考:登記事項証明書の記載例(法務省)(PDF)

住所として登記されるものは2つ

会社の登記事項のうち、住所に関わるものは次の2つです。

登記項目 内容
本店 会社の所在地。自宅を本店にすれば自宅の住所が登記される
代表者の住所 株式会社は代表取締役、合同会社は代表社員の住所

ここで押さえておきたいのは、代表者以外の役員の住所は登記されないということです。株式会社の取締役(代表取締役でない者)については、登記されるのは氏名だけです。上記の法務省の記載例でも、取締役は氏名のみ、代表取締役には住所が併記されている形になっています。

過去の住所も残る

もう一つ、見落とされやすい点があります。

登記事項証明書には「現在事項全部証明書」と「履歴事項全部証明書」があり、後者には過去の変更履歴も記載されます。抹消された事項には下線が引かれる形で残るため、代表者が過去に住所を変更していれば、旧住所と新住所の両方が読み取れます。

法務省の記載例でも、代表取締役の住所が変更された履歴が、旧住所に下線が付された状態で表示されています。本店を移転した場合も同様です。

つまり、一度登記された住所は、その後に変更しても記録としては残り続けるということになります。

法人番号公表サイトとの違い

国税庁の法人番号公表サイトでも、法人の情報を検索できます。こちらは登記事項証明書と違い、請求手続きなしに誰でも閲覧できます。

ただし掲載されるのは商号・本店所在地・法人番号の3つで、代表者の氏名や住所は掲載されません。

情報 登記事項証明書 法人番号公表サイト
商号 記載あり 掲載あり
本店所在地 記載あり 掲載あり
代表者の氏名 記載あり 掲載なし
代表者の住所 記載あり 掲載なし
代表者以外の取締役の氏名 記載あり 掲載なし

整理すると、本店所在地は誰でも簡単に見られる情報、代表者の住所は請求すれば見られる情報という違いがあります。自宅を本店にした場合、自宅の住所が前者に該当することになります。

代表取締役等住所非表示措置

2024年10月に始まった制度

代表者の自宅住所が公開されることがプライバシーの侵害になっている等との指摘を受け、2024年10月1日から、代表取締役等の住所の一部を登記事項証明書等に表示しないこととする措置が始まりました。商業登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第28号)によるものです。

参考:代表取締役等住所非表示措置について(法務省)

全部が消えるわけではない

まず誤解されやすい点として、住所がすべて非表示になるわけではありません。

表示されるのは、道府県および市区町村までです(東京都は特別区まで、指定都市は区まで)。それより細かい町名・番地が表示されなくなる、という仕組みです。

措置有無 公開される情報
措置なし 愛媛県松山市○町○丁目○番○号 代表取締役 ○○ ○○
措置あり 愛媛県松山市 代表取締役 ○○ ○○

市区町村までは公開されますので、「どこに住んでいるか一切分からなくなる」制度ではないという点は、あらかじめ理解しておく必要があります。

対象は株式会社のみ

そして、この記事で最も注意していただきたい点です。

この措置の対象となるのは株式会社に限られます。合同会社をはじめとする持分会社、各種法人は対象外です。(会社法上は株式会社として扱われる特例有限会社も対象外とされています。)

つまり、合同会社を選んだ場合、代表社員の住所は従来どおり全部が登記事項証明書に表示されます。

設立費用の比較では合同会社のほうが十数万円安く済みますが、自宅を本店として一人で設立する場合、この点は費用差と並べて検討する材料になります。会社形態そのものの選び方については、株式会社と合同会社、初めての起業ならどちらを選ぶべきかで整理していますので、あわせてご参照ください。

自動ではなく、申出が必要

非表示措置は、要件を満たせば自動的に適用されるものではありません。法務局への申出が必要です。

しかもこの申出は、いつでもできるわけではなく、設立登記や代表取締役等の就任登記など、代表取締役等の住所が登記されることになる登記の申請と同時にする場合に限られます。登記申請とは別に、申出だけを単独で行うことはできません。

申出手続きそのものは司法書士の業務領域であり、当事務所で代理することはできません。実際の手続きにあたっては、司法書士にご依頼いただくことになります。

非表示になるのは「申出以降の住所」

制度上、非表示の対象となるのは申出以降に登記される住所です。すでに登記されている過去の住所にさかのぼって適用されるわけではありません。

前述のとおり、履歴事項全部証明書には過去の住所が下線付きで残ります。設立後に住所変更のタイミングで申出をしても、設立時に登記された住所は記録として残り続けることになります。

したがって、住所の非公開を確実に実現したいのであれば、設立登記と同時に申し出るのが唯一のタイミングということになります。ここが、この制度を知っておくべき最大の理由です。

利用にはデメリットもある

一方で、この措置には注意すべき側面もあります。

登記事項証明書で代表者の住所を特定できなくなるため、金融機関の与信審査や不動産取引の場面で、本人確認に支障が生じる場合があるとされています。取引先が代表者の実在性を確認しづらくなる、という指摘もあります。

制度としては有用ですが、無条件に使うべきものではなく、事業内容や取引形態を踏まえて判断する性質のものだといえます。

税務上の影響

本店所在地は、税務上も次の点に影響します。

  • 法人住民税を納める自治体が決まります。均等割は本店所在地の都道府県・市町村に納めることになります。
  • 管轄の税務署が決まります。申告書の提出先や税務調査の担当署が、本店所在地によって決まります。

なお、均等割の金額そのものは資本金等の額と従業員数で決まります。この点は会社設立時の資本金はいくらにすべきかで解説しています。

設立前に決めておきたいこと

ここまでの内容を整理します。

  • 登記されるのは本店所在地と代表者の住所。代表者以外の取締役は氏名のみ
  • 本店所在地は法人番号公表サイトで誰でも検索できる
  • 代表取締役等住所非表示措置は株式会社限定で、合同会社は対象外
  • 非表示になるのは市区町村より先の部分で、申出以降の住所のみ
  • 申出は設立登記等と同時にしかできない
  • 本店所在地は均等割の納付先と管轄税務署を決める

住所の扱いは、会社形態・資本金・決算月と並んで、設立してしまうと変更に手間と費用がかかる項目です。設立の準備を始める段階で、あわせて検討しておくことをおすすめします。

そもそも法人化すべきかどうかを含めて検討されている段階であれば、法人化のタイミングはいつ?個人事業主が損しない判断基準もご参照ください。

当事務所では開業・会社設立支援を行っており、料金は事前に公開しています。登記手続きそのものは司法書士にお繋ぎする形になりますが、本店をどこに置くかによる税務上の影響や、設立前に決めておくべき事項の整理についてはご相談いただけます。無料相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

本記事は執筆時の税制・法制度に基づいています。

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